よくわからないもの2
ミドルフェイズ1
見渡すばかりの緑色。遥かなる地平線。そんな光景がすぐさま広がることを期待していただけに、桜花雪の落胆はかなりのものであった。
彼女の滑稽な程の落ち込みように、隣にいた男性、彼女の兄である桜花風太は苦笑する。
「雪、そんなことあるわけないだろう?ここにも人が住んでいるわけだしな」
「でも、写真で見た北海道はもっと野原が広がって、馬が走りまわったり、牛が草を食べている、そんな場所だったんですのよ?」
しごく真面目な表情でそういう妹の世間知らずさに再び苦笑しながら、風太は辺りを見渡す。エミュレイターや、それに類する存在の気配は感じられない。
「ここのあたりにいるはずなんだが、雪は何か感じられないか?」
風太にとって唯一の家族である雪。できれば彼女を争いには巻き込みたくないというのが風太の本音だ。しかし世界の危機が迫っている以上、悠長にはしていられなかった。彼女は魔の仇敵と呼ばれるほど、敏感に侵魔の気配を察知する。強い力が集まる場所に、彼らが捜している人物はいる、というのが風太の読みであった。
「あちらの、方角です」
瞑想するような表情でしばし目を閉じていた雪は、そう言いながらゆっくりと北を指さした。
「富良野の方か」
風来坊故に、風太は日本全国、いや世界各国の地理に詳しい。雪が指さした方角は、ラベンダーで有名な富良野の方角であった。たしかに、事前準備として得ていた情報から、護衛対象はそういう有名な場所が好きそうではある。
「あの人はとにかくミーハーで、あと変人ですわね~」
ミュリエルというアンゼロット付きのメイドの一人は、かつての仲間をそう評していた。できればそういう人間とは関わり合いになりたくないというのが風太の本音であるが、それが世界の危機に関わる重要人物であるとすれば、仕方がない。
「急ぐか」
「はい、兄さま」
雪を抱えあげ、駆ける。それは名の示すとおり、まさに風の如き速度。なんとなく、嫌な予感がしていたのだ。そして彼のそれは、ほとんど外れた試しがない。
予感は、外れはしなかった。風太が思っていたのとは少々違ったが。
「やっほ~、私が春日だよ~」
ラベンダー畑の真ん中でぶんぶんと手を振るのは、見ただけで能天気と分かる笑顔を振りまく人物。中性的な雰囲気の男性で、おそらくは美形に類するのであろうが、その気の抜けた顔のせいで、美しいという印象は全く抱かない。
「桜花風太です」
「ふ~たんね!よっろしく~!」
「桜花雪です」
「ゆっき~ね!よっろしく~!」
良く言えば明るい、正直に言えば阿呆という印象を受ける。だが彼は異世界の力を持った天使なのだ。そして今、かつてない世界の危機をもたらそうとしている魔王が狙うであろうターゲットの一人、それが彼、春日なのだ。
「そういうわけですので、わたくし達と一緒に桜花の屋敷へ来ていただけないでしょうか?」
長々と話をしている余裕もないので、桜花家の当主である雪に説明をさせて、風太は辺りを警戒する。
「九州ってあれよね~、オランダ坂と福岡ドームと阿蘇山、そしてサンゴ礁以外に何かあったかな~?」
最後のは沖縄だし、そもそもどれもこれも同じ県ではないと、風太は心の中でツッコミを入れる。なるほど、リュミエルの言った通り変わった人物であることは間違いないようだ。
油断していたわけではない。それは断言できる。しかし風太の、そして雪のエミュレイター察知能力をもってすら、その接近は感じ取ることができなかった。
最も早く動いたのは意外にも春日であった。
「伏せて!」
反射的に雪も風太も身を伏せる。その上を圧倒的なプラーナ量と共に放たれた魔法が通り過ぎていく。
「へぇ……」
男性とも女性ともつかない声。その声に潜むのは純粋な賞賛と、若干の苛立ち。背格好は子供だが、エミュレイターのことだ。わかりはしない。しかし間違いのは、その圧倒的な実力だ。春日も含め、ここにいる3人は皆歴戦の、実力あるウィザードだ。しかしその彼らをもってすら、目の前の相手は圧倒的な存在というしかなかった。
「雪」
「嫌です」
風太が何を意図しているのかがすぐわかったのであろう。控えめな彼女らしからぬ強い口調。風太の考えを理解しているからこそ、彼女は首を縦には振らないであろう。だが逆に言えば、作戦のすべてを彼女は理解している。それならば答えは簡単なことであった。
「ストームラン!」
叫ぶと同時に手に持った神罰銃を放つ。そして弾丸よりも速く動き、風太は魔王との距離を一気に零煮詰める。遠近両方の射撃、そして攻撃を喰らわせた後は再び距離を取る。風太が最も得意とする戦法である。
「ぐっ……」
しかしその攻撃は、魔王には全く通じなかった。魔王は防御行動をとることすらせず、数多の弾丸をすべて受けとめた。そして接近していた風太を捕まえたのだ。防ぐなりなんなりすれば、そのようなことは決して不可能であろう。だからこそ魔王は受け止めなかった。受けとめる必要すらなかったのだ。実力差はわかっていたが、ここまでというのはさすがに風太の計算外であった。
だが、もう1つの目標だけはなんとか達成できそうであった。ちらりと後ろを見ると、そこには雪と春日の姿はもうない。おそらくは魔法のアイテム力で今頃は桜花の屋敷にいるはずだ。簡単な詠唱で瞬間移動ができるアイテムではあったが、目の前の相手はその簡単な詠唱すら許さなかったであろう。だからこそ風太は自ら動いて隙を作った。そうすれば賢明な妹のことだ、現状でベストの選択肢を取るであろう。
「俺の、勝ちのようですね」
「そのようだな。見事だ」
今度の声は100%の賞賛。そして戦士に与えられる最後の名誉は決まっている。
風太は、自分の命が燃え尽きる音を聞いた。
ミドルってかOPだよな。
NPCとか、PCとかの設定があったら教えてね!言葉遣いは俺の脳内のイメージだよ!
こいつはなんで出ない!とかも言ってね!多分忘れてるせいだから(何

